行動経済学入門その2
2022年8月21日更新
「損失回避性とは」
保険加入だけでなく、資産運用から日常の買い物まで「お金に関することになると、冷静に考えると合理的でない行動をとってしまう傾向がある」ということを、公表している「行動経済学」という学問があります。
この行動経済学の主要な5つのトピックをご案内していく全5回のうち、今回は第二回「損失回避性」です。
これは行動経済学の柱となる「プロスペクト理論」の一つで、お金の話になると人は合理的な判断ができない傾向(バイアス)がある、というのを顕著に示すものです。
前回のアンカリング効果同様、知識として正しく理解して日常生活に活かしてください。
「損失回避性」の例
まず、例としてコイントスでかんたんなギャンブルの実験があります。
あなたは参加しますか?

コイントスゲームの二つのパターン
ゲーム1
参加費は1万円です。コイントスで
表が出たら賞金2万円
裏が出たらゼロ(1万円没収)
つまり
表:+10000円
裏:ー10000円
ですね。あなたなら参加しますか?
実験ではこの場合ほどんど参加する人はいないようです。
ゲーム2
参加費は1万円です。コイントスで
表が出たら賞金3万円
裏が出たらゼロ(1万円没収)
つまり
表:+20000円
裏:ー10000円
損失10000円に対して、2倍以上のプラスがあってやっと参加しようとする人が出てくるそうです。
つまり損失=2倍以上の得でないと、釣り合わないと考えるようです。
期間限定セールも注意

こんな広告も
明日以降値上がりしてしまってから後悔する自分を想像して、
いま買わないと損してしまう!と考えてしまう人間の心理が利用されます。
このように「利益から得られる満足より同額の損失から得られる苦痛の方が大きいことから、損失を利益より大きく評価する人間心理のこと」を損失回避性といいます。
資産運用での注意
このように、「損すること」を過大に評価してしまうことは傾向として誰でも多少はみられ、危険なものに手を出さないという意味では大事なことですが、
恐れすぎもよくありません。
昨今の超低金利下、「損するかもしれないから」との理由で、資産運用の分野に耳を貸さない方もいらっしゃいます。
損する可能性と上手く付き合いながら、お金を上手に増やしていく知識もこれから大事になってくるものなので、「損失=悪」と決めつけて全くアクションを起こさないのも考えものかと思います。
少し時間を使って、本を読んだり、専門家の話を聞いたりして、情報をつかみに行くと、お金ではない「お得な情報」は意外に身近にあったりします。
ぜひ損すること(自己投資)も大事にしながら上手にお金とつきあっていただければと思います。